財産の管理
商標権のQ&A
特許権のところでも記載しましたが,商標権等の知的財産権を登録して権利化するということは、
・権利者がその権利を排他的に独占できること、
・第三者が使用することを禁止できること
を意味します。
商標には,他者の商品と区別し,又製造・販売者はだれかという出所表示機能があり,さらに商標を見て消費者は安心して購入することができるという品質保証機能を有しています。
自社の商品や役務に独自の「ブランド」を付して販売・営業することによってその商標自体に経済的価値が付与されていきます。しかし,商標を登録しておかないと,他者に全く同じ商標が使用されることにもなりかねません。
このように,商標権は会社の財産ですし,それを守るためにも商標登録を行っておく必要があるといえます。
商標は,「文字、図形、記号若しくは立体的形状若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合」であって,事業者がその商品や役務について使用する標章をいうとされます。
そして,商標法では,登録できない場合を列挙する形で規定しており,例えば,
1)普通名称、
2)慣用商標
3)地,品質,効能のみ
等の商標は登録できません(商標法第3条)。
また,商標は他者識別機能を有するものでなければなりませんので,
4)他人の登録商標に類似する商標
5)他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標
等も登録ができません(商標法第4条)。
(手続き図 工事中)
商標権の存続期間は,設定の登録の日から10年とされています。
しかし,商標権は特許権等と異なり,一定期間経過の後は誰でも使用できるという制度ではなく,商標権を登録した者がその使用を継続する限り商標に付与された信用等を保護する必要がありますので,10年ごとの更新をすることができます。
特許庁に支払う手数料は,基本的に1)出願時,2)登録時に費用が必要になります。また,商標権は更新制度があり,10年ごとに更新をする場合は更新料が必要になります。その額の詳細については特許庁のホームページをご参照下さい。
なお,出願手続き等を弁理士に依頼する場合は,その他に弁理士の手数料が必要になります。
特許権の場合と同様に,商標権にも独占権・排他権が認められますが,権利者自身が使用する場合以外に第三者に使用させることもできます。その場合には,ライセンス契約を締結し,使用させる商標権,商品等,対価などを予め定めておくのが通常です。
また、ライセンスする権利内容にも、大きく分けて
1)専用使用権
2)通常使用権
があります。
1)は、第三者が独占的・排他的に実施できる権利で、権利者といえども当該商標を使用することはできませんし、ライセンス契約だけでは足りず特許庁の原簿に登録しないと効力が生じません。
2)は、第三者に対し独占的・排他的な実施を許諾するものではなく、権利者も実施ができ他の第三者に対しても重ねてライセンスすることが可能ですし、ライセンス契約のみで効力が生じます。
第三者が自分の商標を無断で使用している場合は,商標権の侵害となります。このような行為を発見した場合には,速やかに対応することが必要となります。放置しておきますと,シェアを奪われるなどの営業上の利益を損なうばかりか,粗悪品が出回ったりすると権利者の信用を毀損するだけでなく取引先にも損害を被らせるおそれがあります。
第三者がかかる行為を行っている疑いを発見した場合は、まず、1)第三者の行為を詳細に調査し、権利侵害かどうかを検討する必要があります。その上で、権利侵害だと判断した場合は、2)第三者に対して権利侵害している旨の警告書を出すのが通常でしょう。そこで円満に解決すればよいのですが、残念ながら解決しない場合には、3)裁判上で解決するしかありません。
裁判上の請求としては、
・差止請求
・損害賠償請求
・不当利得返還請求
・信用回復に必要な措置請求
などの請求が考えられます。
その他、刑事上でも、特許権侵害者に対しては5年以下の懲役又は500万円以下の罰金に処すると定められております(特許法第196条)。
警告書をそのまま放置しておきますと、通常は訴訟に発展していきます。
そこで、警告書を受けたらまず、
1)正当な権利者による有効な権利に基づいたものであるか
2)権利内容の調査
3)御社の使用商標と権利者の商標とが類似するか
4)御社が当該商標を使用するにあたり正当な権原を有するか
5)権利に無効理由が存在するか
等を検討する必要があります。
ただし、このような検討は、やはり専門家である弁護士・弁理士に相談する必要があるでしょう。
(鷹見雅和)