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遺言とは

遺言の方式について

遺言とは、一定の方式に従った遺言者の死後の法律関係を定める最終意思の表示をいいます。
遺言者は、遺言により、包括又は特定の名義で、その財産の全部又は一部を処分することができますが、遺留分に関する規定に違反することができません(民法964条)。

15歳に達した者は、誰でも遺言をすることができますが(民法961条)、遺言をする時においてその能力を有しなければならないとされます(民法963条)。
この関係で、成年後見開始の審判により成年被後見人とされた者が遺言をするには、事理を弁識する能力を一時的にせよ回復していると認められる必要があり、そのことを明らかにするために、遺言の際には、医師2人以上の立会いが必要とされています(民法973条1項)。
遺言に立ち会った医師は、遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して、これに署名し、印を押さなければならないとされています(民法973条2項)。

遺言は、遺言者の死亡の時からその効力を生じますので(民法985条1項)、遺言者の死亡前には何ら法律上の権利を生じさせません。
その反面、遺言に従って遺贈をうけるかどうかについては、相続放棄と同様、遺言によって遺贈を受けるものとして指定された者(受遺者)のイニシャティブに委ねられ、受遺者は、遺言者の死亡後、いつでも、遺贈の放棄をすることができるとされます(民法986条1項)。

遺言は、民法の定めた一定の方式に従う必要があり、方式に違反する遺言は無効となります。
遺言は、一旦法定の方式に従ってなされても、いつでも撤回できますし(但し、遺言の方式を守る必要があります)、前にした遺言が後にした遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされます(民法1023条1項)。

民法が定める遺言の方式を分類すると、次のようになります。

民法は、「遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。ただし、特別の方式によることを許す場合は、この限りでない」と定めており(967条)、あくまで遺言の基本方式は、自筆証書、公正証書又は秘密証書による遺言です。特別の事情のもとで普通の方式に従った遺言をなしえない場合に関する特別の方式による遺言はあくまで例外的な方式ですので、ここでは、普通の方式による遺言について、説明します。

決定相続について承認・放棄について
遺産分割について

自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者が、遺言の全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押すという方式による遺言(民法968条1項)をいいます。
自筆証書遺言は、自書能力(文字が書けて理解できる能力)があれば、誰でも単独で自由に作成することができ、他の遺言の方式に比べて、最も安価で簡便な遺言の方式です。
自筆証書遺言は、遺言全文を遺言者本人が自書することが要求されますので、ワープロで遺言全文・日付を作成し、署名だけ遺言者が自書しても、無効です。

自筆遺言証書の日付については、具体的に遺言書を作成した日付を記入すべきであり、昭和47年7月吉日と記載された遺言を無効とした最高裁判例もあります(最判昭54年5月31日)。
自筆証書に加除その他の変更を加えたときには、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じないとされています(民法968条2項)。

また、自筆証書遺言は、遺言者が秘密裏に作成したものですから、その存在と内容を公的に確認してもらうために家庭裁判所の検認の手続を経る必要があります(民法1004条)。
検認の手続を経なければ、自筆証書遺言に効力が生じないというわけではありませんが、不動産の登記手続をする場合、検認を得ない自筆証書遺言に基づく相続登記申請は受理されない扱いとなっています(平成7年12月4日民三4343法務省民事局第三課長回答)。

自筆証書遺言は、最も簡便な遺言の方式ですが、法律的に見て不備な内容になってしまう危険があり、後に紛争の種を残したり、無効になってしまう場合もありますので、その内容・効力にご心配のある方は、ご相談ください。

⇒ 詳細はご相談下さい。

公正証書遺言

公正証書遺言とは、遺言者が、公証人の面前で、遺言の内容を口授し、それに基づいて、公証人が、遺言者の真意を正確に文章にまとめ、公正証書遺言として作成する遺言をいいます。

民法969条は、公正証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならないとしています。

@ 証人2人以上の立会いがあること。
A 遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。
B 公証人が、遺言者の口述を筆記し、これを遺言者及び証人に読み聞かせ、又は閲覧させること。
C 遺言者及び証人が、筆記の正確なことを承認した後、各自これに署名し、印を押すこと。ただし、遺言者が署名することができない場合は、公証人がその事由を付記して、署名に代えることができる。
D 公証人が、その証書は前各号に掲げる方式に従って作ったものである旨を付記して、これに署名し、印を押すこと。

なお、言語及び聴覚の機能に障害がある人が公正証書遺言を行う場合には、特別の定めもあります(民法969条の2)。

公証人は、裁判官、検察官等の法律実務に携わってきた法律の専門家ですので、正確な法律知識と豊富な経験を有しています。
したがって、複雑な内容であっても、法律的に整理した内容の遺言にしますし、方式の不備で遺言が無効になるというおそれもありません。

また、公正証書遺言は、家庭裁判所で検認の手続を経る必要もありません。
しかし、遺言者にとっては、自筆証書遺言と比べて、費用がかかってしまうという難点があります。

公正証書作成の費用については→こちらをご覧ください
         (「日本公証人連合会」のHPに移動します)

秘密証書遺言

秘密証書遺言とは、遺言者が遺言証書に署名・押印のうえ封印し、その封紙に公証人が所定の記載をしたうえ公証人、遺言者及び2人以上の証人が署名・押印した遺言をいいます。

民法970条は、秘密証書によって遺言をするには、次に掲げる方式に従わなければならないとしています。

@ 遺言者が、その証書に署名し、印を押すこと。
A 遺言者が、その証書を封じ、証書に用いた印章をもってこれに封印すること。
B 遺言者が、公証人1人及び証人2人以上の前に封書を提出して、自己の遺言書である旨並びにその筆者の氏名及び住所を申述すること。
C 公証人が、その証書を提出した日付及び遺言者の申述を封紙に記載した後、遺言者及び証人とともにこれに署名し、印を押すこと。

ここでは、遺言者が遺言全文を自書する必要はなく、ワープロによる遺言全文の作成も許容されていますが、遺言者の署名押印が要求されていることに注意を要します。

また、自筆証書と同様に、遺言証書に加除その他の変更を加えたときには、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じないとされています。
また、秘密証書遺言は、自筆証書遺言と同じように、この遺言書を発見した者が、家庭裁判所に届け出て、検認手続を受けなければなりません。

秘密証書遺言は、遺言の存在をはっきりさせながらも、内容を秘密にできるという利点があります。
しかし、公証人は、その遺言書の内容を確認することはできませんので、遺言書の内容に法律的な不備があったり、紛争の種になったり、無効となってしまう危険性がないとはいえません。

(千賀 守人)

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