遺言書が無いと…
法定相続について
遺言書のないまま相続が開始された場合、原則として、相続人は以下のように決まり、相続人間で法定相続の割合によって、故人の遺産が承継されることになります。
【相続人】
故人の配偶者は常に相続人となります。また、配偶者以外の親族で、以下に示す者がいる場合、その順番に配偶者と共に相続人となります。つまり、第1順位の者がいる場合は第1順位のみ、第1順位の者がいない場合に第2順位の者が、第1順位及び第2順位の者が共にいない場合に第3順位の者が、それぞれ相続人になります。
第1順位 故人の子
子が相続開始前に死亡しているときは、その子の直系卑属(子又は孫など)が相続人となります。
第2順位 故人の直系尊属(父母又は祖父母など)
親等の異なる直系尊属がいる場合は、故人により近い者が優先します。例えば、父母のいずれかが存命の場合、祖父母が存命でも相続人にはなりません。
第3順位 故人の兄弟姉妹
兄弟姉妹が相続開始前に死亡しているときは、その子(甥・姪)が相続人となります。
・相続を放棄した場合は、その人は最初から相続人でなかったものとみなされます。 ⇒ 相続の放棄へ
・相続人の欠格事由(遺言書を偽造、隠匿した場合など)や相続人の廃除(故人を虐待した場合など)等が民法で規定されており、上記順位の者でも相続人となれない場合があります。
【法定相続】
相続人が上で述べたどの順位であるかによって、法定相続分は下記のように異なります。
■第1順位 配偶者と子 配偶者:1/2
子 :1/2を頭数で等分した割合
■第2順位 配偶者と直系尊属 配偶者:2/3
直系尊属:1/3を頭数で等分した割合
■第3順位 配偶者と兄弟姉妹 配偶者:3/4
兄弟姉妹:1/4を頭数で等分した割合
●非嫡出子(法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子)の相続分は、嫡出子の1/2とされます。ただし、最高裁判所の平成25年9月4日大法廷決定によって、嫡出子と嫡出でない子の相続分に関する差別が憲法違反であるとの判断が示されましたので、早晩この民法の規定が見直される可能性が高いといえます。
●父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は(半血)、父母の双方を同じくする兄弟姉妹(全血)の相続分の1/2とされます(第3順位の相続の場合)。
●相続開始時に胎児であった場合でも、相続については、既に生まれたものとみなされ、相続人となります。
●内縁関係(事実婚)にある妻や夫は、相続人ではありませんので、法定相続分を有しません。しかし、戸籍上の相続人がだれもいない場合には、遺産は国庫に帰属するのが原則ですが、故人の特別縁故者として遺産を受けとることができる場合があります。ただし、家庭裁判所に対して申立を行い、同裁判所によってそれが認められた場合に限ります。
(鷹見 雅和)