「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」については、家庭裁判所に対して、後見開始の申立てをし、家庭裁判所は、審理の結果、当人が精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあると判断した時には、後見開始の審判を行います。
その際、家庭裁判所は、当人の保護にあたる成年後見人を選任します。
「精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者」とは、先にも述べた通り、契約といった自己の法律行為の結果を認識できるだけの精神的能力を欠くのが普通の状態である者をいいます。
具体的に、これを例えるのは困難ですが、日常的な買い物程度もできない状態と考えてください。
後見開始の申立てに際しては、当人の保護にあたる成年後見人候補者を指名しますので、当人の身近なご家族を成年後見人候補者として指名し、裁判所にこれが認められれば、そのご家族が引続き当人の保護にあたることができます。
家庭裁判所に後見開始の申立てを行い、後見が必要かどうか家庭裁判所が判断します。
家庭裁判所に後見開始の申立てができるのは、本人(当人)、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官です(民法第7条)。
また、市町村長にも審判の請求権があります(老人福祉法32条、知的障害者福祉法28条、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律51条の11の2)。
申立には、後見を相当とする医師の診断書を添付する必要があります。
家庭裁判所が後見開始の審判を下すと、当人は成年被後見人と呼ばれ、当人がなした契約等法律行為は、取り消すことができます。 被後見人が勝手に契約をしても、後で、これを取り消すことができるようになるのです。
ただし、日用品の購入その他日常生活に関する行為については、この限りでないとされ(民法第9条)、取消は認められません。
この結果、被後見人は、自身では法律行為をできなくなってしまうので(契約の相手方としても、後で取り消されるかもしれない契約を望む者はいません)、被後見人に代わりその者の財産管理をする必要が生じます。
そこで、裁判所が選任した後見人が、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表(代理)するものとされます(民法第859条第1項)。
なお、後見開始の審判が確定したときは、家庭裁判所書記官の嘱託または当事者の申請に基づき、後見の登記が行われます。
(千賀 守人)